-シニフィアン、シニフィエ-

 いままで言語の本質を「聴覚イメージと概念のつながり」という言葉で表現してきました。
しかしながら、聴覚イメージという言葉が発話という声に出して行う行為と混同しやすいもの
に見えてしまわないでしょうか。また、発話と言語は独立したものだとソシュールは考えました。

 したがって、より言語を一つのシステム、より言えば記号のシステムとして見なす定義の仕方の
方がよいと言えます。ソシュールは、「 聴覚イメージと概念のつながり」が存在する図形を記号
と呼びました。例えば、交通標識なども記号と言えます。なぜなら、交通標識であれば、図形
(聴覚イメージ)とその意味が繋がったもので言えるからです。ソシュールは、この図形のような
表象をシニフィアンと呼びました。またそのシニフィアンと繋がっている意味をシニフィエと呼び
ました。

 結局は、聴覚イメージがシニフィアンに、概念がシニフィエに置き換わっただけです。

 言語を(シニフィアンシニフィエが繋がりをもった)記号のシステムとして定義するするには
こちらの方がよいとソシュールは考えたのでした。

 シニフィアンシニフィエは、以下のように恣意性と線状性を定義できます。

1)言語においてシニフィアンシニフィエの結合は、完全に恣意的です。
2)言語においては、シニフィアンの本質は聴覚上のもので、時間の中でだけ展開され、
 時間から借り受けた次のような特徴をもっています:
 a)広がる特徴
 b)ただ一次元の方向のみに広がる
[ソシュール, p118]


 この節では、シニフィアンシニフィエを用いて言語を改めて定義するための準備行
いました。その準備とは、言語は記号が元になっているということです。

 次の節では、いままで説明してきた用語を使ってソシュールがどのような分析を行いた
かったについて説明します。